2020年の初回リリース以来、Darts は時系列分析のための広く利用されるオープンソースの Python ライブラリとなっています。多くの研究者やエンジニアが予測タスクのために Darts を活用してきました。近年、Chronos-2、TimesFM 2.5、TiRex、PatchTST-FM といった時系列基盤モデルがゼロショット予測において顕著な進歩を遂げ、複数のベンチマークで従来のカスタムモデルを上回る精度を示しています。これらのモデルは大規模データセットで事前学習されており、新しい系列に対して再学習なしで直接適用できるため、利用障壁を大幅に低減します。
しかし、これらの基盤モデルは通常、独立した Python パッケージとして公開され、各モデルが独自の API と依存関係を持ちます。その結果、インターフェースが断片化し、ユーザーはデータ形式、前処理手順、予測呼び出し方法を個別に学習する必要があります。さらに、既存のデータローダーや評価ツールとの相互運用性が限られているため、パイプライン全体での統合評価が困難です。これにより、研究者や実務者がモデルを十分に比較・活用することが妨げられています。
この課題に対処するため、Darts チームは統一された FoundationModel クラスコレクションを開発しました。このコレクションは、上記4つの基盤モデルを標準化されたインターフェースでラップし、データ前処理、モデル読み込み、予測、不確実性推定、バックテストを含む完全な予測ライフサイクルをサポートします。重要なのは、すべての操作が Darts の統合フレームワーク内で行われ、外部依存が最小限に抑えられている点です。ユーザーは Darts をインストールするだけでこれらのモデルを利用できます。
既存の Darts パイプラインでは、モデル名を 'ARIMA' から 'Chronos-2' に変更するだけで基盤モデルに切り替えられ、コードの修正は不要です。新しいパイプラインでは、ゼロショット予測に加えて、特定のデータセットへのファインチューニングも可能です。また、不確実性推定とバックテスト機能も利用でき、Darts に内蔵されたデータ処理・評価ツールと組み合わせることで、予測ワークフロー全体を統一された環境で完結できます。
この進歩は時系列分析と予測の分野にとって重要な意味を持ちます。基盤モデルの利用障壁を低減し、より広範な実験と比較を促進します。研究者は異なるモデルを同一条件下で容易に評価でき、実務者は最新の予測機能を既存システムに迅速に統合できます。基盤モデルの数が増えるにつれて、このような統一フレームワークは分野の標準化と効率化の鍵となるでしょう。