arXivで公開された研究により、1台のカメラと1つの光源のみで両眼視線推定を実現する新しい手法が提案されました。この手法は、モバイルデバイスなどでのハードウェア複雑性を低減する可能性を秘めています。
従来の視線追跡システムは、自由な頭部運動下での推定に少なくとも1台のカメラと2つの光源を必要とするとされていました。しかし、スマートフォンなどの機器では、特に光源の数を減らすことが望まれます。そこで研究者らは「仮想光源」の概念を導入しました。この仮想光源は、実際の光源とカメラに関して幾何的に対称な位置にあり、画像内に「仮想グリント」を生成します。
研究チームは、取得画像内の2つの瞳孔と2つのグリント(実グリントと仮想グリント)の距離関係を利用して仮想グリントを推定し、2つの光源が利用可能であると仮定した多項式回帰により視線を推定しました。さらに、単一グリントシステムに実用的な新しい正規化係数も検証されています。
実験の結果、この手法の性能は許容範囲内であることが示されましたが、2つの実際の光源を用いるシステムと比較すると精度が低下することが確認されました。本研究成果は、2019年に中国武漢で開催された国際会議VSIP 2019で発表され、ACM会議録に掲載されています。論文著者はTongbing Huang氏を含む4名です。本手法は、低コストな視線追跡システムへの道を開くものであり、特にハードウェアコストに敏感なモバイル機器分野での応用が期待されます。また、仮想光源のコンセプトは、コンポーネント数を削減する必要がある他のビジョン応用にも示唆を与える可能性があります。今後の課題として、複雑な照明条件下でのロバスト性向上や、2光源システムとの性能差を縮めるためのより効率的な回帰手法の開発が挙げられます。