若年成人における早期発症大腸がんは増加傾向にあり、公衆衛生上の課題となっている。しかし、この年代に見られる「レッドフラッグ」症状については、フォローアップ検査の指針となるエビデンスベースのガイドラインが不十分である。さらに、構造化された診療記録だけでは、症状の持続期間や出現状況、そして大腸がんの確立されたリスク要因である家族歴といった、早期発見や追跡判断に必要な詳細を捉えきれない。こうした情報の欠落は、リスクの高い若年患者を自動的に特定する取り組みを困難にしている。
この問題に対処するため、Nikkie Hooman氏らは、自由文の臨床記録から6種類のレッドフラッグ症状と家族歴リスク状態を抽出する自動手法「VERGE」を開発・評価した。論文は2026年9月3日にarXiv(arXiv:2609.04366)へ投稿された。VERGEはエージェンティックなワークフローを採用しており、まず検索拡張生成(RAG)を用いて初期ラベルと根拠を提案し、その後、限定的な検証・精緻化サイクルに通す。このサイクルでは、テキスト上の根拠と臨床的妥当性を確認し、修正と再確認を繰り返す。問題が解決されるか上限に達するまで行われ、未解決の主張は人間のレビューに回される。
評価では、臨床医がラベル付けした4,033ペアの「診療記録・所見」を使用し、単一エージェントのベースライン、ルールベースの臨床言語処理ベースライン、代替の基盤言語モデルと比較された。単一エージェントのベースラインと比べ、VERGEは偽陽性の所見を削減し、適合率を0.764から0.849へ、MCC(マシューズ相関係数)を0.681から0.730へ改善した。これは再現率を犠牲にしない、適合率と再現率のトレードオフにおけるバランスの取れた向上だと報告されている。さらに、フラグが付いたエラーの大部分は自動で解決され、最終的に人間のレビューが必要だったのは全主張のわずか1.5%にとどまった。
この研究の意義は、検証を組み込んだ有界なワークフローによって、真のポジティブを検出する能力を損なわずに、不必要なポジティブ所見を減らせることを示した点にある。こうした信頼性の向上は、若年患者の大腸がんリスク評価を支援する臨床言語処理ツールにとって重要である。VERGEの手法は大腸がんに限らず、自由文の臨床データに依存する他のハイリスクスクリーニング領域でも応用できる可能性がある。今後、より豊富な臨床コンテクストや外部知識と組み合わせることで、実際の診療ワークフローへの統合が進むことが期待される。