行動クローニングはロボット操作における有力な手法となっているが、現在の多くの方策は予測のたびに固定された観測ウィンドウから内部表現を再構築しており、実行中に持続的な潜在文脈を保持していない。この設計は短いタスクでは問題になりにくいものの、長い時間軸にまたがる操作や前段の文脈に依存する操作では情報の一貫性を失わせる。論文「Tiny Recursive Policy: Recursive Latent Refinement for Visuomotor Control」はこの限界に対し、持続的な時間状態と再帰的な潜在表現の精錬を組み合わせた、パラメータ効率の高い行動クローニング方策 Tiny Recursive Policy(TRP)を提案している。
TRP の中核は各制御ステップの計算手順にある。方策は共有の計算モジュールを用いて高次および低次の潜在状態を複数回反復的に更新し、その上で行動系列をデコードする。ゼロから表現を再構築するのではなく、精錬後の状態を後続の予測ステップへ伝播させることで、実行を通じて連続した潜在文脈を維持する。この「ステップ内の再帰的精錬とステップ間の状態引き継ぎ」という構造により、比較的小さいパラメータで複雑な推論を実現する。
評価は LIBERO-100、MetaWorld ML45、そして記憶能力を特に問う LIBERO-Mem の3つのベンチマークで行われた。結果として TRP はマルチタスクおよび少数ショットの設定で競争力のある性能を示し、長期的タスクや文脈依存タスクでは特に大きな改善が見られた。同時に、TRP のパラメータ数は大規模生成ベースラインより大幅に少なく、性能上の優位が単なるモデル規模の拡大によるものではないことを示している。
論文では実行時の摂動実験により、持続状態の引き継ぎの役割も検討されている。結果は、時間的文脈への要求が高いタスクほど、方策が持続状態の引き継ぎに強く依存することを示した。さらに注目すべき点として、訓練時に状態引き継ぎへ摂動を加えることで、引き継ぎのノイズと視覚的破損の双方に対する頑健性が大きく向上することが確認された。これはより安定した再帰方策の訓練に有用な手がかりとなる。
アブレーション実験は、持続状態と再帰的精錬の間の強い相互作用を明らかにしている。状態引き継ぎによる利点はステップ内の計算量に大きく依存し、両者が組み合わさることで効果を発揮する。また最終的な性能はパラメータ数だけでは説明できない。本論文は2026年10月23日に arXiv へ投稿され、ロボティクス(cs.RO)に分類されている。著者は Hakan Aktas ら2名で、論文番号は arXiv:2610.33288 である。