放射線遮蔽研究において、高分子複合材料を透過するX線ビームのエネルギー透過率を評価することは難しい課題である。モンテカルロ輸送シミュレーションによる参照解は非常に高精度だが計算コストが大きく、著者らの参照シミュレーションは1回あたり4×10⁹光子履歴、20,000秒(5時間超)の時間制限で打ち切られる。一方、閉形式の解析手法ではこうした複雑な状況を表現できない。
そこで研究チームは、無順序の分子構成の多重集合、各成分の質量分率、および4つのバルク物理記述子を透過率I(t)/I0へ直接写像する人工ニューラルネットワークモデルSTAR-XPCを提案した。推論時間はわずか1〜3ミリ秒である。
モデルの中核はSet Transformerである。集合構造により本質的に置換不変性を持ち、入力成分の順序に依存しない。固定長のパディング集合を用いることで最大11成分の混合物を扱え、成分数の異なる配合を同一の訓練でカバーできる。各成分は化学分野で事前学習されたTransformer言語モデルChemBERTaによって埋め込まれ、分子レベルの化学情報がモデルに取り込まれる。
訓練データは自動化されたPENELOPE/penEasyパイプラインで生成された。対象はポリエチレン系の遮蔽複合材スラブで、厚さは0.15〜2.5ミリメートル、線源は30、80、100、120 kVの4種類の管電圧である。前処理後のデータセットはn=4697のシミュレーション構成を含む。
評価にはリークのない層化10分割交差検証を用い、平均二乗誤差MSE=(1.12±0.56)×10⁻⁴、正規化MSE率NMSE%=0.0294%±0.0147%、決定係数R²=0.9988を得た。サンプルごとの誤差では、α=0.10のトリム平均による絶対百分率誤差(APE)が1.66%、中央値APEが1.15%であった。
効率面では、本モデルの推論は基準となるモンテカルロシミュレーションより数桁高速で、1クエリあたり1ミリ秒未満に対し参照実行は数時間を要する。それでもI(t)/I0を高い実効精度で予測できる。論文は13ページ・図6点で、機械学習(cs.LG)と人工知能(cs.AI)に属し、2026年10月20日にarXivへ投稿された。