Moonshot AIはK3.1シリーズの最初のモデルとなるKimi K3.1 Proを公開した。3T級のオープンウェイトモデルとして位置づけられ、100万トークンのコンテキストウィンドウを備える。コーディング、エージェント、知識系の各ベンチマークで最强のクローズドモデルに対抗することを狙う。開発者にとってはK3より安いAPI価格が魅力だが、オープンウェイトはあくまで予告であり、実際の公開は2026年11月になる見込みだ。
仕様はMixture-of-Experts(MoE)で、総パラメータ2.8T、トークンあたりのアクティブパラメータは104B。単一GPUで動く類のモデルではなく、MoonshotはK3について64基以上のアクセラレータで構成するスーパーノードを推奨し、重みにMXFP4、活性化にMXFP8を使うとしている。ベースとなるK3はKimi Delta Attention(KDA)とAttention Residuals(AttnRes)を採用し、Stable LatentMoEフレームワークを通じて896個のエキスパートのうち16個を活性化する。クイックスタートのドキュメントによれば、APIはテキスト、画像、動画の入力を受け付ける。
K3.1 ProはK3をポストトレーニングしたバージョンで、ポストトレーニングの計算量を大幅に増やしている。数百の下流ドメインにまたがる強化学習を統合的に実施し、そのためにRLフレームワーク、長文脈推論、サンドボックス基盤、ロールアウトのスケジューリングを最適化した。あわせて2〜3倍高速に動作するKimi K3.1 Pro Highspeedも提供される。
ベンチマークの数値はすべてMoonshotの自己申告で、最大推論強度、多くはClaude Codeのハーネスを用いて計測されている。コーディングではTerminal-Bench 4.0で65.7%を記録し、同社の比較表ではClaude Opus 5.5の66.4%に次ぐ2番手。SWE-Marathonでは51.7でOpus 5.5の46.3を上回る。社内ベンチマークのKimi Code Bench 3.0 Long-horizonでは61.2と、K3の55.95から改善した。
一方、科学系タスクは明確な弱点だ。Terminal-Bench Science 0.1では38.1にとどまり、同じ比較表でGPT-6 Astraは68.1、Opus 5.5は63.3と25ポイント以上の差がつく。ツールを使うBenchCADでは92.7で、Opus 5.5の96.2、GPT-6 Astraの95.9に及ばない。ツールなしでは72.8で、Opus 5.5の73.0とほぼ肩を並べる。金融分野ではOfficeQA Pro v2で64.4の最先端スコアを報告し、Frontier Financeは58.6。社内の金融テストではK3比でモデリングが7.2ポイント、リサーチが11.6ポイント向上した。
ハルシネーションの抑制も進んでいる。社内ストレステストのKimi Hallu Bench Hardでは、主張単位のハルシネーション率がK3の23.4%から8.3%へ低下し、同社が示す約65%減に相当する。ただしGPT-6 Astraは同じテストで5.5%とさらに低い。
サイバーリスクへの対応として、Moonshotはオープンウェイト版のため中間トレーニングと強化学習からサイバー関連データを除外した。社内のxdev-bench-hardでは、フィルタリング前のチェックポイントがpass@3で90.5%を解いたのに対し、出荷されるK3.1 Proは81.0%。攻撃的サイバー作業では最先端のクローズドモデルに劣ると同社は説明する。
利用経路はKimi.ai、Kimi Work、Kimi Code、そしてKimi APIで、API IDはkimi-k3.1-proとkimi-k3.1-pro-highspeed。エンドポイントはOpenAI互換だ。価格は標準版が100万トークンあたり入力2.00ドル・出力10.00ドル、キャッシュヒットは0.20ドル。Highspeedは入力4.00ドル・出力20.00ドルとなる。K3は入力3.00ドル・出力15.00ドルだった。
運用上の制約もいくつかある。思考モードは常時有効で、推論強度はlow、high、maxから選べる(既定はmax)。temperatureは1.0、top-pは0.95に固定。出力は既定131,072トークンで、最大1,048,576トークンまで伸ばせる。利用には最低1ドルのチャージが必要で、視覚入力は公開画像URLを受け付けず、base64かアップロード済みファイルIDを使う必要がある。
限界も明快だ。重みは未公開のため現時点でセルフホストはできず、2.8Tという規模はマルチノードのスーパーノード級サービングを前提とする。科学寄りのターミナル作業では競合に25ポイント以上後れを取る。優位を主張する項目のいくつかは社内ベンチマークに基づく。さらにMoonshotはK3について、ハーネス内で推論履歴を捨てると出力が不安定になると警告しており、K3.1 Proのドキュメントもassistantメッセージ全体を返すよう求めている。