Sakana AI、Namazu搭載の日英中翻訳ツール「Sakana Translate」を公開 – 翻訳・校正・質問の3モード
Sakana AIはチャットサービスSakana Chatに新機能Sakana Translateを追加した。Namazuモデルシリーズを搭載し、日本語・英語・中国語間の双方向翻訳を実現。翻訳・校正・質問の3モードを無料のWebアプリとして提供する。本記事では各モードの詳細、XCOMET-XLベンチマーク結果、実用的なユースケースを解説する。
Sakana AIは、同社のチャットサービスSakana Chatに新機能「Sakana Translate」を追加した。これはNamazuモデルシリーズを搭載したWebベースの翻訳ツールで、日本語、英語、中国語間の双方向翻訳をサポートする。無料のWebアプリとして提供され、1つのアカウントで全3モードを利用できる。
Sakana AIによれば、Sakana Translateの目標は「日本向けの深い翻訳」であり、単なる単語や文構造の置き換えではなく、言語間で文脈、トーン、レジスターを伝えることを目指している。このツールは、一般的な翻訳ツールが日本語の特徴(ビジネス敬語、文化的に固有の概念、略語、インターネットスラングなど)を見落としがちな問題に対処する。文法は正しくても、対人トーンが失われるケースが多いという。
3モードの解説
Sakana Translateは1つの画面に3つの機能を統合している。
- 翻訳モード:貼り付けたテキストを3言語間で変換。最大約5000文字の日本語に対応し、ストリーミング出力(トークンごとに徐々に表示)と履歴の自動保存機能を備える。メール、スライド、記事、Webページなどに最適。
- 校正モード:ドラフトをより自然な表現に洗練。差分ハイライトで変更箇所を表示し、トーン、丁寧さ、形式を調整。ビジネスメールや英文チェックに有用。
- 質問モード:翻訳結果についてフォローアップ質問が可能。ニュアンスの説明、代替案の提案、文法解説を同じコンテキストで行う。なぜそのような翻訳になるのかを学習したい場合に便利。
Namazuの仕組み
NamazuはSakana Translateのエンジンである。Sakana AIは2023年にDavid HaとLlion Jonesによって設立された東京の研究所。Namazuはゼロから訓練されたのではなく、既存のオープンウェイト基盤モデルに後学習を施している。報告されているベースモデルにはDeepSeek-V3.1-Terminus、Llama 3.1 405B、gpt-oss-120Bが含まれる。後学習は、既に訓練済みのモデルをさらにチューニングする手法で、ゼロから訓練するよりも安価で高速。Sakana AIはこれを日本語の言語と文化にモデルを適合させるために利用している。Sakana AIは2026年3月24日に初めてNamazuシリーズを発表し、Sakana Translateはその適用作業を翻訳タスクに適用したもの。
ベンチマークと性能
Sakana AIチームは、WMT 2024 General Translationタスクデータを用いてXCOMET-XLで翻訳品質を評価した。XCOMET-XLはUnbabelが開発したニューラル評価指標で、約35億パラメータを持ち、翻訳品質を0から1のスコアで出力する(高いほど良い)。報告された結果によれば、Sakana Translateはリーディングモデルに迫るスコア帯を記録し、Sakana AIは競争力のある品質と説明している。また、日常的な日本語テキストに対する定性的チェックも実施し、敬語、文化的概念、地名、固有名詞、日常的な文脈での強みを報告している。
実用的なユースケース
Sakana AIは2つの具体的な出力例を公開している。
- ビジネスメール(日本語→英語):丁寧で間接的な依頼文。Sakana Translateの出力は「I saw your quote. This is a bit of a selfish request, but could we talk a bit more? If you have a budget in mind, I can work on it internally, so please let me know.」と、丁寧なトーンを維持している。
- インターネットスラング(英語→日本語):カジュアルな略語表現。出力は「まあ、わかる人にはわかるよね。グループチャットの内輪ネタだから。」と、会話的な日本語の同じカジュアルな温度を保っている。
評価指標の詳細
現時点でSakana Translateに公開APIはなく、APIアクセスは将来のエンタープライズ向け計画として挙げられている。ただし、評価方法は再現可能で、XCOMET-XLはオープンソースで実行可能。記事ではPythonライブラリを使用したサンプルコードが提供されている。
強みと限界
強み:無料のWebアプリ、3モード、1アカウントで利用可能;日本語・英語・中国語の双方向カバレッジ;約5000文字の長文入力とストリーミング;敬語、スラング、文化的概念のトーンとレジスター処理;文法を超えた差分ベースの校正。 限界:現時点で公開APIなし;ベンチマーク数値はSakana AI自身の評価に基づく;起動時は3言語のみで日本語中心;SSO、監査ログ、オンプレミスなどのエンタープライズ機能は計画段階。
Sakana Translateは、特に日本語の微妙なニュアンスを扱う必要のあるユーザーにとって、翻訳・校正・質問を1つの画面で行える便利なツールである。