データストリーム分類において、概念ドリフトとクラス不均衡は長く併存する課題である。モデルはデータ分布の変化に継続的に適応しながら、少数クラスに対する識別性能を維持しなければならない。既存の多くの手法は、インスタンスの削除、メモリの再構築、リサンプリング、合成データの生成といった能動的なメモリ管理に依存している。しかし、こうした操作は追加コストを伴い、有用な履歴情報を失う可能性もある。
Tobias Calliesら4名の著者による論文「Inference-Time Prior Adaptation for Imbalanced Data Streams under Concept Drift」は、PAI-KNNと呼ばれるk近傍分類器を提案する。従来の発想とは異なり、この手法はメモリ側ではなく推論段階で適応を行う。単純なスライディングウィンドウバッファを維持し、直近の観測から推定したクラス事前確率を用いて決定規則を動的に調整する。つまり、保存するサンプルは変えず、それらをどう判断に用いるかだけを変化させる。
著者らは、さまざまな不均衡比率とドリフトパターンを網羅する多数の合成データストリームで評価を行った。実験の結果、PAI-KNNは最先端手法と比較して競争力のある性能を示し、動的なクラス不均衡と概念ドリフトを伴うシナリオでは特に優れた性能を発揮した。これは、推論時の事前確率調整が有効な適応メカニズムとなり得ることを示しており、複雑なメモリ操作に頼る必要は必ずしもない。
本研究の意義は、メモリベースのストリーム分類器の設計空間を広げる点にある。非定常環境への適応は、メモリ内容の変更だけに限らず、決定規則の調整によっても大きな効果が得られる。論文は12ページ・図7点で、ECMLPKDD 2026のStreaming Continual Learning Workshopに採択された。コードやデータへのリンクはarXivページで確認できる。