本論文では、レースカーのマルチボディモデルにおいて3次元の路面形状を扱うための新しいModelicaコンポーネント「TrackJoint」を提案している。このコンポーネントは、路面を2つの自由度を持つジョイントとして表現する。2つのジョイント座標は、基準線に沿って進んだ距離と、その基準線からの横方向のオフセットである。これらの座標を用いることで、単一のframe_bコネクタの位置、姿勢、角速度を同時に決定できる。
路面ジオメトリは、周期的な区分5次スプラインの小さな集合としてジョイントに渡される。そのため、事前にスプラインをフィッティングしておけば、1つのコンポーネントで任意のサーキットを表現できる。これは、コースごとに複雑な路面モデルを再構築する必要をなくし、マルチボディシミュレーションにおける路面表現の汎用性と効率を高める設計である。
路面拘束の閉合にはダランベールの原理を採用している。ジョイント座標に対応する2つの一般化力をゼロに設定することで、ラグランジュ乗数を導入せずに拘束を扱うことができる。これにより、追加の乗数変数に伴う数値的な複雑さや計算コストを回避している。
実装面では、TrackJointをDymola上でマルチボディレースカーに接続し、両者を1つのFMI 3.0 FMUとしてエクスポートする。この同一のFMUは、時間領域シミュレーションと、CasADi/IPOPTを用いた最小ラップタイム最適化の両方に、モデルを変更することなく利用できる。著者らは、これが可能となる理由として、ジョイントが弧長座標を実状態として保持し、その時間微分を公開する点を挙げている。これにより、問題を距離を独立変数とする形式に書き換えることが可能になる。
論文では、シンガポールのフォーミュラ1サーキットを対象とした最小ラップタイムシミュレーションの結果が報告されており、レースカー最適化における本ジョイントコンポーネントの有効性が示されている。本研究は2026年のAmerican Modelica & FMI Conferenceで発表される予定であり、ロボティクスおよびシステム制御の分野にまたがる研究である。