マルチエージェントシステムの社会的評価の多くは、環境に介入して特定の行動を意図的に引き出すのではなく、環境から自然に創発する行動を観察する手法に留まっている。論文「Fig: Automated Multiagent Behavior Elicitor」(arXiv:2610.28891)は、ゲーム環境に対して標的を絞った誘発介入を行うエージェント型システム Fig(Finding Interactions in Games)を提案している。著者は Anrui Gu ら3名で、2026年10月20日(火)20:16:08 UTC に arXiv へ投稿された。分類は人工知能(cs.AI)およびマルチエージェントシステム(cs.MA)で、全文は約997KB、版は arXiv:2610.28891v1、DOI は https://doi.org/10.48550/arXiv.2610.28891 である。
Fig の処理は自然言語による行動記述から始まる。まずその記述を複数のサブ行動へ分解し、新たな社会的ゲームを生成するか既存のゲームを選択したうえで、ゲームのエンジン、対戦相手、指示、コンテキストに対して単独または組み合わせの介入を実行する。モデルの行動評価には、組み込みの機械的チェックと合成ルーブリックによる判定を組み合わせている。介入手法、生成されたゲーム、評価メカニズムについては人手によるレビューで検証済みである。
実験では、Fig が6種類のテスト行動のために生成した有効なシナリオにおいて、モデルは平均45.2%のエピソードで目標行動を試みた。6種類の行動とは、協力(cooperation)、搾取(exploitation)、欺瞞(deception)、隠れた連携(covert coordination)、裏切り(betrayal)、妨害(sabotage)である。対照が利用可能なゲームと行動の組では、Fig の介入により、対応する対照ゲームと比べて行動試行率が平均10.9%向上した。
著者らは、この研究がマルチエージェント環境を、意図的で制御可能かつ再現可能な行動評価のためのプログラマブルなテストベッドとして利用できることを示したと述べている。コードは GitHub(https://github.com/fleet-ai/fig)で公開されている。なお、45.2%と10.9%はいずれも平均値であり、前者は Fig が生成した有効なシナリオ、後者は対照条件が存在するゲームと行動の組に対応する点に留意が必要である。また評価は人手レビューによる検証に依存しており、これらの数値は具体的なシナリオや対照設定とあわせて解釈すべきである。本プレプリントの DOI は DataCite により発行され、執筆時点では登録手続き中であった。