大規模言語モデルのエージェントは、モデルのパラメータを更新せずとも、実行経験から改善できる。これをハーネス自己進化と呼ぶが、その効果はモデルがハーネスの与える指針に従って実際に行動できるかどうかに大きく依存する。Zhihao Yang氏ら10名によるarXivの新論文は、この前提が常に成り立つわけではないと指摘する。
研究チームは7つのモデルと3つのベンチマークで検証し、103のタスクとスキルの組み合わせを特定した。これらのスキルは能力の高いGPT-5.6-lunaを平均31.1ポイント改善する一方、弱いGemma-4-E4Bを8.8ポイント悪化させた。さらに重要なのは失敗の内訳で、弱いモデルが失敗した実行の86%では、違反した要件がすでにスキル本文に明記されていた。つまり情報が足りないのではなく、その指針を実行可能な手順に落とし込めていないことが原因である。
そこで著者らは「スキル適応」を提案する。タスクの目的は変えずに既存スキルを書き換え、実行器の能力に合った、より実行しやすい指針にするという考え方だ。まずツール実行、コンテキスト管理、指示追従、検証という4つの観点で失敗を診断し、その診断結果を固定のメタスキルに蒸留して、自己進化の際のスキル改写を導く。
メタスキルの下では、能力の高い外部改写器Kimi-K3が実行証拠を一切使わずにスキルを適応できた。適応後のスキルは3つの弱い実行器を元のスキルより5.1〜14.1ポイント改善し、試行錯誤に頼らずとも適応自体が相応の効果を持つことを示している。
さらに著者らはこの適応を5ラウンドの自己進化ループに組み込んだ。各ラウンドでモデルは自身の実行軌跡と検証器のフィードバックに基づいてスキルを改訂する。Gemma-4-E4BからKimi-K2.5までの7つの実行器で、メタスキルを加えると最終スコアは同一ループのメタスキルなしの場合より一貫して2.0〜5.1ポイント高くなった。
論文は、すべての実行器が同じ能力を持つと仮定せず、「指針を実行可能にすること」を進化の中心目標に据えるべきだという実務的な設計指針を示している。本論文は24ページ、図12点、表4点からなり、機械学習・人工知能・計算言語学に分類され、2026年10月10日にarXivへ投稿された。