現在の能力のすぐ上を狙い続ける(2007年)
数学者のテレンス・タオは、チェスと数学の研究を例に、成長の最適な戦略は現在の能力よりも少し難しい問題に挑戦し続けることだと論じています。楽な問題だけに取り組むこと(停滞につながる)と、難しすぎる問題に飛びつくこと(挫折につながる)という両極端を警告し、自分の範囲のすぐ外にある問題に取り組むバランスの取れたアプローチを提唱しています。また、共同研究、教えること、簡略化したモデルから始めることなども推奨しています。
数学や他の多くの分野において、進歩の鍵は微妙なバランスにある。現在の能力に安住せず、かといって非現実的な目標に飛びつくのでもない。著名な数学者テレンス・タオはブログ記事で、チェスと数学研究のアナロジーを用いてこの考え方を説明している。
タオによれば、チェスにおいて最も効果的な上達法の一つは、自分のレーティングより少し高い相手と対戦し続けることである。数学でも同様に、自分が現在扱える範囲(既存の知識、直感、経験で効果的に処理できる領域)よりも少し難しい問題に挑戦することが推奨される。範囲内の問題は必ずしも簡単ではないが、どう始めるか、主な困難は何か、どの文献を参照すべきかなどが明らかである。
彼は二つの極端を警告する。一つは範囲内の問題だけに取り組むことで、安定した論文発表は得られるが、長期的には知識が陳腐化し、研究成果の関連性を失うリスクがある。もう一つは有名で難しい未解決問題にいきなり挑むことで、これは宝くじに当たるようなもので、準備不足による誤った結論や embarrassment を招きやすい。
タオが勧めるのは、この二つの中間を行く戦略である。具体的には、自分のツールで完全には扱えないが、いくつかの仮定を置けば取り組める問題を選ぶ、既存の結果をあえて制限付きで再証明する、あるいは既存の結果を少しだけ難しい状況に一般化する、といった方法がある。これらは短期の論文出版よりも、長期的な能力拡大を目的としている。彼はこれを複利の投資に例え、年間10%ずつ範囲を広げられれば数十年後には大きな差が生まれると述べている。
さらに、隣接分野の研究者との共同研究や、完全には理解していないテーマの講義を担当することも効果的だ。共同研究では互いの洞察を共有でき、講義では学生に教えるために深く理解する必要が生じる。また、難しい問題に取り組む際には、まず問題の簡単なバージョン(特殊ケースやおもちゃモデル)を作り、現在の技術で扱える最も単純なものから始め、徐々に元の問題に戻っていく手法を勧めている。このプロセスは、技術の限界を明確にし、他の方法による証明から手がかりを得るのに役立つ。
タオは最後に、研究ポートフォリオを多様化することを提案している。大部分の時間を範囲のすぐ外にある中リスク・中リターンの問題に割き、一部を範囲内の低リスク・低リターン、そしてごく一部を高リスク・高リターンの問題に充てる。このバランスが、着実な成長と時折のブレークスルーの両方を可能にするという。