エンドツーエンド自動運転の訓練は、長らく開ループの模倣学習に依存してきた。しかしこの手法には二つの限界がある。第一に、専門家のデモンストレーションは各シナリオにつき一つの行動しか示さないため、モデルは同じ場面で有効な別の行動を学べず、テスト時にユーザー指定の選好へ適応することもできない。第二に、デモンストレーションに含まれるノイズや曖昧さが、エンドツーエンドモデルに対して一貫性のない信頼性の低い教師信号を与えてしまう。論文は、運転行動が本質的にマルチモーダルであると指摘する。すなわち、同一の場面に対して複数の異なる行動が妥当な応答となり得るのであり、その多様性は経路よりも速度に大きく由来する。
この観察に基づき著者らは新しい計画パラダイムを提案する。経路は従来どおり模倣学習で獲得する一方、速度については専門家のデモンストレーションに頼らず、候補となる速度集合を生成し、学習済みのスコアリング関数で複数の基準に沿って評価する。この関数は物理的に根拠のある安全制約によって教師付けされる。つまりモデルは、ある経路の下でどの速度がより適切で安全かを判断することを学ぶのであり、専門家がある瞬間に出した速度をそのまま複製するのではない。
このパラダイムはCLAP-AD(Closed-Loop Aware Planning for Autonomous Driving)として実装されている。既存のエンドツーエンド運転モデルと組み合わせられるプラグイン型の計画ヘッドであり、著者らの知る限り、速度条件付きの訓練を必要とせずにテスト時の速度選択を明示的に制御できる最初の手法である。これは、モデルのバックボーンを変更したり再訓練したりすることなく、より保守的あるいはより効率的な運転スタイルといった速度挙動への介入を運用側が行えることを意味する。
実験では、Bench2Drive-SpeedベンチマークにおいてCLAP-ADが82.53の速度遵守スコア(Speed-Adherence Score)を記録し、この指標の最先端を更新した。同指標で最強のベースラインであるTFv6を12.9ポイント上回りながら、閉ループ運転性能も高い水準で維持している。Bench2DriveではUniADおよびVADに対して運転スコアをそれぞれ28.5、32.7改善し、実世界の運転データで構築されたNAVSIM v2ではバックボーン比でEPDMSを6.1向上させた。これは、本手法がシミュレーションの閉ループベンチマークにとどまらず、実データの場面にも適用できることを示している。
本論文はWACV 2027に採択されており、全17ページ(8ページの本文、参考文献、補足資料)で、5枚の図と7つの表を含む。著者はEmad Aghajanzadeh氏ら11名で、2026年10月26日にarXivへ投稿された。論文番号はarXiv:2610.36079で、ロボティクス、コンピュータビジョンとパターン認識、機械学習の各分野にまたがる。プロジェクトページではデモや詳細が公開されている。