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スマートフォンカメラによるパッシブな心臓健康モニタリングへの取り組み

Google Researchのチームは、スマートフォンのフロントカメラを使って日常使用中に心拍数と安静時心拍数をパッシブに測定するシステムPHRMを開発しました。Nature誌に発表された研究では、心拍数の平均絶対パーセント誤差(MAPE)が心電図(ECG)と比較して10%未満、日次の安静時心拍数の平均絶対誤差(MAE)がウェアラブルデバイスと比較して5 bpm未満という精度を達成。システムは、約700名の参加者から収集した35万本以上のビデオクリップからなる多様なデータセットでトレーニングされ、肌色のバランスが確保されています。PHRMは15の主要な遠隔光電容積脈波法(rPPG)モデルを凌駕し、実環境で全肌色に対して精度基準を満たした唯一のモデルです。

2026年6月4日、Google ResearchのチームがNature誌に発表した研究では、スマートフォンのフロントカメラを使って日常的な使用中に心拍数と安静時心拍数をパッシブに測定するシステム「PHRM(Passive Heart Rate Monitoring)」が紹介されました。この成果はプロダクトマネージャーのEric S. Teasleyと主任研究科学者のMing-Zher Pohが主導し、特にウェアラブル端末の普及が進んでいない低リソース環境や心血管疾患リスクの高い人々への健康モニタリングのアクセス拡大を目指しています。

心拍数と安静時心拍数は心血管の健康を示す重要なバイオマーカーです。PHRMはフォトプレチスモグラフィ(PPG)の原理を応用し、心臓が血液を送り出すたびに皮膚と光の相互作用が変化する様子を捉えます。ユーザーが顔認証を行うたびに、フロントカメラが8秒間の顔動画をキャプチャし、デバイス上のディープラーニングモデル(時間シフト畳み込みニューラルネットワーク)が心拍数を推定し、信頼度スコアを出力します。また、1日を通じて得られた複数の測定値をカルマンフィルターで統合し、日次の安静時心拍数を推定します。

研究チームは、これまでで最大かつ最も多様なrPPGデータセットを構築しました。約700名の同意を得た研究参加者から、実験室および実生活環境で35万本以上の動画クリップを収集。肌色の代表性を確保するため、Monk肌色スケールを用いて、明るい肌(Group1、Monk1-4)、中間(Group2、Monk5-7)、暗い肌(Group3、Monk8-10)の参加者がそれぞれ少なくとも25%、25%、33%を占めるようにしました。これは後にFDAが提案した肌色グループ分けと一致しています。さらに、各グループ間の心拍数MAPEの差が5%未満であるという非劣性基準を設定しました。

実験室検証では、365名の参加者からさまざまな照明条件や活動状態で顔動画と心電図(ECG)を同時記録。別の104名のテストセットでは、PHRMはすべての肌色グループでMAPEが10%未満を達成し、比較した15の最先端rPPGモデルを凌駕しました。これらのモデルの中には、すべての肌色で10%未満のMAPEを達成したものはありませんでした。

さらに、初の「自由生活」研究を実施。231名の参加者が個人のスマートフォンにデータ収集アプリをインストールし、8日間通常通り使用しながらECG胸ストラップとFitbit Charge6を装着。アプリは顔認証のたびに8秒の動画を記録し、1日平均231クリップを収集。参加者は各クリップを確認し機密情報や他の顔が含まれていないことを確認した上で、暗号化サーバーへのアップロードを承認しました。

101名の検証サブセットでは、PHRMの全体的なMAPEは6.09%(信頼度ゲーティング後)。Group1、2、3のMAPEはそれぞれ5.04%、5.12%、7.84%で、いずれも10%未満かつ非劣性基準を満たしました。Bland-Altman分析では、PHRMは平均0.64bpm過小評価し、95%一致限界は-11.3~10.3bpm。信頼度が高いほど誤差が小さくなりました。

安静時心拍数については、1日20回以上の測定値がある参加者を対象に評価。90名の参加者の73.6%の日でPHRMが安静時心拍数を推定でき、全体のMAEは4.39bpm(Fitbit Charge6比)で、事前目標の5bpmを下回りました。Bland-Altman分析では平均0.1bpmの過小評価、95%一致限界は-9.1~9.2bpm。誤差は測定日数の増加とともに減少し、Group3でも3日目以降は5bpm未満となりました。

また、PHRMが推定した安静時心拍数が高い参加者は、BMIが高く心肺フィットネス(VO2max)が低い傾向にあり、心血管リスクの方向性を正しく捉えていることが確認されました。

PHRMには限界もあります。肌色が濃いグループでは測定成功率が低く、これはメラニンによるPPG信号検出の難しさに起因します。今後の改善点として、カメラ露出の最適化や追加サンプリングのトリガーが挙げられます。また、参加者の会話や頭部動作による外れ値誤差は、動画安定化や加速度計ベースのゲーティングで軽減可能です。プライバシーとデータ完全性のため、顔認証やオンデバイス処理も検討されています。

本研究の成果を広めるため、Googleは資格のある研究者向けにデータセットと事前学習モデル「PHRM-mini」を提供します。アクセスにはIRB承認とデータ保護要件の遵守が必要で、非商業研究目的に限定され、再識別や生動画の公開は禁止されています。

PHRMは、日常的に使われるスマートフォンを介してウェアラブル並みの心拍数モニタリングを実現した画期的なシステムです。ユーザーの習慣と最先端の深層学習を組み合わせることで、心臓健康管理の民主化に貢献すると期待されます。