AI論争は自由意志に関するもの
本稿は、AIが人間に取って代わるかという論争の核心が、決定論と自由意志という古くからの議論にあると主張する。著者はデータサイエンスの個人的な経験を通じて、現実世界のデータはノイズが多く確率的であることを示す。量子力学は非決定論的な宇宙を支持しており、AIは不確実性を排除できない。AIはルールベースの仕事を破壊する一方で、不確実性への対応を要する役割は価値を保つ。
著者はデータサイエンスのキャリア初期に、機械学習アルゴリズムと予測分析に魅了され、株式市場予測に挑戦した経験を語る。しかし現実は非確定的であり、市場は決定論的な方程式では解けないことを痛感する。大学院のサプライチェーン演習では、高度なモデルよりも単純な3週間移動平均が最良の予測を示した。これが示すのは、実データはノイズが多く、完全なトレンドではないという事実である。
十年経った今でも、AIはトレンドを迅速に捉え高度なモデルを構築できるが、不確実性を排除できない。宇宙は本質的に確率的であり、最良のアルゴリズムも不確実性を消せない。
「AIが人間を置き換える」という議論は、決定論対自由意志の論争に帰着する。決定論は宇宙が基本法則で説明可能であり、すべての事象が先行原因によって決定されると主張する。しかし量子力学の発見は、微小・巨大・高速なスケールでは結果が確率的であることを示し、自由意志を支持する。AI万能論は、宇宙が完全に定義可能で説明可能であるという前提に依存しているが、非決定論的宇宙はそれを否定する。
例えば、地球に生命が存在する確率は0.001%未満だが、私たちはここに存在する。数学は確率を示せても、非決定論的宇宙では実際に何が起こるかを決定できない。
著者はAI懐疑論者ではないが、AIが本質的にランダムな現実システムを自動化できるとは考えない。株主利益のためのコスト削減による大規模な雇用破壊は起こりうるが、人間をAIに置き換えてもシステムが魔法のように効率的になるわけではない。生産性向上の明確な証拠はない。
しかし、すべての仕事が安全なわけではない。反復パターンが80%以上を占める仕事(データ入力、スケジューリング、会計など)はAIが容易に再現できる。一方、確率的空間で運用される仕事はAIが助けとなる。重要なスキルは不確実性への対処である。
将来、AIが極めて正確な予測をするようになった場合、『Devs』のような問題が生じる。その時は雇用よりも大きな問題に直面するだろう。
本稿は人間のみによって執筆された。AI懐疑論ではなく、執筆を愛するからである。