有機農業のスケーラビリティは、害虫監視に伴う労働コストによって部分的に制限されています。従来の監視方法は人手に依存しており、時間と労力がかかるだけでなく、害虫が深刻な被害を与えた後にしか発見できないことが多いです。ドローンやローバーは植物の上方や横からの農業監視に適していますが、多くの害虫は葉の裏側や茎に生息しており、これらの領域は通常の方法ではカバーが困難です。この課題に対処するため、研究チームはSTEMbotを開発しました。これは植物の葉冠下で自律航行するように設計された小型の攀じ登りロボットシステムであり、早期の害虫検出を可能にします。
STEMbotの設計は、既存の攀じ登りロボットの限界を深く分析したことに基づいています。既存のプラットフォームは、機上での知覚能力が不足しているか、枝分かれのない垂直な幹にしか対応できず、複雑な枝構造を持つ植物の葉冠には対応できません。STEMbotは、完全な幾何学的PIN-SLAMパイプラインとセマンティックOcTreeを統合し、植物を攀じ登りながら堅牢な位置推定とマッピングを実現します。PIN-SLAMは幾何学的特徴を利用して位置を特定し、セマンティックOcTreeは環境の意味的理解を提供することで、遮蔽の多い葉冠下でも正確な自己位置を維持できます。
動作計画には、多様体制約A*プランナーを提案しました。従来のA*アルゴリズムとは異なり、このプランナーはロボットの動作を植物の茎で構成される多様体上に制約し、さらにレイトレーシング目標指定を組み合わせることで、STEMbotが枝構造を認識し、最適な経路を選択し、葉に隠れた目標を検査できるようにします。この計画戦略により、複雑な植物構造内でのナビゲーション能力が大幅に向上しました。
ハードウェア実験の結果は有望です。STEMbotは直径7~33mmの茎で信頼性の高い移動を実証し、トマトやキュウリなど4種類の異なる植物標本で自律航行を達成しました。定量評価では、オフラインフォトグラメトリベースラインと比較して平均チャンファー距離が1cm未満の高忠実度幾何再構築を達成し、自律航行に必要なグローバルに一貫したオドメトリを維持できることが確認されました。
この研究は2026年のIEEE/RSJ国際知能ロボットおよびシステム会議(IROS 2026)に採択され、関連するコードとデータセットはプロジェクトページで公開されています。STEMbotの登場は、有機農業における自動害虫監視に新たな可能性をもたらし、将来的には大規模な展開により農業労働コストの削減に貢献することが期待されます。