スマートセルラーブリック:物理世界における集団知能へ向けて
Sakana AIの研究者らは、数百の単純なセルラーブリックからなるシステムを開発した。各ブリックは同一のニューラルセルオートマトンを実行し、局所的な通信のみで全体の形状を協調的に認識する。ハードウェア実験では4つの形状で100%の精度を達成し、故障や損傷の検出、さらには少数の種細胞からの再生も可能。本成果はNature Communicationsに掲載された。
Sakana AIの研究チームは、自然界の集団知能に触発され、ソフトウェアから物理世界へと研究を拡張した。コペンハーゲンIT大学およびAutodeskとの共同研究により、数百の単純なセルラーブリックで構成されるシステムを開発。各ブリックは同一のニューラルセルオートマトンを実行し、物理的に接続された隣接ブリックとのみ通信することで、中央制御装置やグローバルな知識なしに全体の形状を協調的に認識する。この成果はNature Communicationsに掲載された。
セルラーブリックは小型のプリント基板キューブで、6面すべてに電気コネクタ、マイクロコントローラ、LED、電源回路を搭載。任意の物体に積み重ね可能で、カスタムデジタルシリアルプロトコルを介して局所通信を行い、数十回の更新サイクルで全体として単一の形状ラベルに収束する。シミュレーションでは98.97%の精度を達成し、26個のブリック(ギター)から197個(丸テーブル)までの4種類の形状を用いたハードウェア実験では100%の成功率を示した。
システムの中核は、深層学習によって局所更新規則を学習するニューラルセルオートマトン(NCA)である。各セルは近傍からの情報と自身の記憶状態に基づき、自分が属する形状クラス(平面、椅子、車、テーブル、家、ギター、船)を判断する。従来の厳密なマッチングとは異なり、形状クラス全体に一般化できるため、バリエーションに対する柔軟性と耐性が向上している。
ロバスト性テストでは、5%のブリック故障でほとんどの形状が高い精度を維持し、平面や船では15%の故障でも性能低下は軽微だった。例外はギターのような狭い首部分で、1つの故障が通信を断ち切る可能性がある。システムはトレーニング時に見られなかった変化にも一般化し、5本脚のテーブルやずれた橋のボートを正しく分類したが、縮小版テーブルは椅子と誤分類された。
研究者らは隠れチャネルの活性化パターンを分析し、システムが初期に左右および放射状の勾配を形成することを発見。これは生物発生におけるモルフォゲンに類似し、椅子の背もたれが前後軸シグナルを生成して「椅子」への再分類を誘導する仕組みを説明する。
損傷検出では、形状分類と局所損傷検出を同時に学習し、平均94.8%の精度を達成。さらに、少数の種細胞から出発し、損傷がなくなるまで新しい細胞を追加することで、完全な形状を再生することに成功した。シミュレーションでは64x64x64グリッド、18000以上のキューブからなる複雑な形状(魚、Sakana AIロゴ、ハート)にもスケールアップ可能で、自己修復の可能性を示している。
本研究は集団知能を物理世界に実装する重要な第一歩であり、スマートマテリアルや再構成可能ロボティクスへの応用が期待される。