SLICE-Memは、2026年10月8日にarXivへ投稿された論文であり、Xiaobin Chenら5名の著者によるcs.CLおよびcs.AI分野の研究である。本論文は、大規模言語モデル(LLM)エージェントの長期的な対話記憶を構築する際のコスト問題に焦点を当て、SLICE-Memと呼ばれる軽量な記憶フレームワークを提案している。中心的な考え方は、記憶の受入・抽出・組織化を反復的な生成LLM推論から切り離すことにある。
長期記憶は、LLMエージェントが個別化された時間的に一貫した対話を維持するために不可欠だが、従来の手法では記憶の受入、情報抽出、記憶組織の各段階でLLM推論を繰り返すため、大きなコストと遅延が発生する。SLICE-Memはこのボトルネックに対し、2段階のオンラインパイプラインを設計する。まずコンパクトな分類器が保持する価値のあるユーザーターンを判定し、顕著性に基づく記憶受入を行う。次に、意味依存関係に基づく抽出器が、受入済みのターンを簡潔な記憶エントリへ変換する。オンライン処理では生成LLMを一切呼び出さず、エントリ間の調整と統合はオフラインの統合段階に先送りされる。
評価では、Memoraの週次サブセットとLongMemEval-Sの2つのベンチマークを用い、8Bおよび30BのQwenバックボーンで記憶構築と統合を実行した。Qwen3-30B構成における生成型記憶ベースラインMemOSとの比較では、SLICE-MemのオンラインパイプラインはMemora Weeklyで46.60のFAMA(忘却を考慮した記憶精度)を記録し、ベースラインは46.68だった。LongMemEval-Sでは精度56.8%に対しベースラインは59.3%であった。指標はわずかに低下するものの、差は小さい。
さらに注目すべきは効率面の成果である。同じ比較条件下で、SLICE-Memは総LLMトークン消費をそれぞれ92.4%と99.5%削減した。これは、LLMによる記憶構築への依存を大幅に減らしながら、長期記憶に有用な証拠を保持できることを示している。論文の結論は、軽量な受入・抽出手法が生成型ベースラインに近い精度で動作可能であり、エージェントの長期記憶に対して費用対効果の高い代替経路を提供することを強調している。