階層的オープンボキャブラリ物体ナビゲーション(Hierarchical Open-Vocabulary Object Navigation, OVON)では、エージェントが未見の環境で、自由形式の指示に従い、シーン・部屋・領域・インスタンスの各レベルで指定された目標を探索する必要があります。近年のLangMapによってこのタスクは形式化されましたが、部分観測の下で確実に解くことは依然として難しい問題です。空間的な接地には環境全体にわたる持続的な証拠が必要であり、一方で目標の検証には明確で判別力のある候補ビューが求められるためです。
この課題に対し、Xuetong Pei氏ら7名の著者らはSAP-Navを提案しました。これは完全オンライン・ゼロショットのナビゲーションフレームワークで、空間意味表現と能動的知覚を組み合わせます。エージェントは探索中に、能動的に取得した部屋ビューからクエリ可能な空間意味表現(Queryable Spatial-Semantic Representation)をインクリメンタルに構築します。この表現により、探索済みの任意の位置から空間意味クエリを実行でき、事前計算されたシーンマップやタスク固有の学習を必要としません。
さらにSAP-Navは、能動的視点検証(Active Viewpoint Verification)を導入します。現在の観測が目標候補の検証に十分な証拠を提供しているかを評価し、不十分な場合はエージェントをより情報量の多い視点に再配置してから、カテゴリと属性の制約に基づいて候補を検証します。あいまいな視点での早すぎる判断を避ける戦略です。
SAP-Navは階層的OVON向けに設計されていますが、標準的なカテゴリレベルのOVONにも対応し、タスク固有の学習や事前計算されたシーンマップを必要としないため、汎用性が高いと言えます。LangMapとHM3D-OVONのベンチマークでは、全体として最高の性能を達成し、特に領域レベルナビゲーションでは、学習ベースの手法と比較して成功率(SR)が12.2%向上しました。さらに実ロボット実験でも実用性が実証されています。
本論文はarXiv:2608.12707として2026年8月13日に投稿され、受理後にはコードが公開される予定です。この研究は、未知環境で自然言語のナビゲーション指示を理解し実行するサービスロボットの実現に向けた、再学習不要で即時展開可能なアプローチを提供します。