脳波(EEG)に基づく疾患診断では、通常、被験者ごとに1つの予測が求められる。しかし、一般的なパイプラインでは、記録を短いインスタンスに分割し、各インスタンスに被験者ラベルを継承させて、インスタンスレベルの分類器を訓練する。この方法は、すべてのインスタンスが同等に信頼できる診断的エビデンスを提供するという暗黙の仮定に依存している。マルチインスタンス学習(MIL)は、各被験者をバッグと見なすことで、継承ラベルの問題を回避する。ところが、EEGデータセットでは被験者数がインスタンス数よりはるかに少ないため、エンドツーエンドのMILで学習される表現の質が制限されることがある。
これらの課題に対処するため、研究者らはBridgeMILを提案した。これは、インスタンス表現学習と被験者レベルの教師信号を分離する2段階フレームワークである。第1段階では、継承されたインスタンスラベルを使わずにエンコーダを事前学習する。具体的には、時間的に近いウィンドウ同士と、被験者内から独立にサンプリングしたサブバッグ同士を整列させる。さらに、分散と共分散の正則化により、表現の崩壊を防ぎ、冗長性を低減する。負のペアは不要である。第2段階では、エンコーダをアテンション型MILアグリゲータに転移し、被験者レベルの予測にのみ教師信号を適用する。また、特徴保持により表現のドリフトを制限する。
3つのEEG疾患データセットと5つの代表的なバックボーンを用いた実験では、BridgeMILは15のデータセット・バックボーン設定のうち14で最高平均精度を達成し、全体の平均精度は76.57%に達した。これは最強のベースラインより4.28ポイント高い値である。この結果は、インスタンス表現学習と被験者レベルの教師信号を分離することで、大量のEEGインスタンスを効果的に活用しつつ、個々のインスタンスに疾患ラベルを誤って割り当てることを避けられることを示している。
さらなる分析により、いくつかの重要な知見が得られた。まず、インスタンスごとに継承ラベルの信頼性が大きく異なることが明らかになり、インスタンスラベルを直接使うことの欠点が裏付けられた。次に、モデルの性能はインスタンス数よりも被験者数の不足に対して敏感であり、被験者レベルの多様性がより重要であることが示された。最後に、BridgeMILが学習する表現空間はより構造化されており、被験者ごとのクラスタが明確で、診断クラス間の分離も改善されていた。
全体として、この研究は、豊富なEEGインスタンスから学習しながら、教師信号を被験者レベルの予測目的に合わせることの重要性を強調している。BridgeMILは、脳波による疾患診断に新しいモデリングの視点を提供するとともに、医療時系列データにおけるマルチインスタンス・マルチ被験者問題への今後の取り組みに参考となるだろう。