サイモン・ウィリソンは2026年11月6日、自身のブログでThe Vergecastのホストを務めるナイレイ・パテル氏のコメントを引用した。この発言は「Big Tech lost big in the 2026 election」と題したエピソードの中で語られたもので、その主張は明快だ。現在のAI製品は、それが伴うさまざまなコストを一般の人々に受け入れさせるだけの出来には達していない、というのである。
パテル氏は、人々がAIによる概要表示や後を絶たないディープフェイクの粗悪なコンテンツと引き換えに、自宅裏に建つデータセンターの絶え間ない唸り声に耐えなければならない、という取引を納得させることはできないと述べる。同氏にとって、これは誰にとっても割に合わない話である。さらに、いま盛んに喧伝される「エージェント」についても懐疑的で、実体があるとは言えず、少なくとも現時点では誰も望む形で使われていないのではないかと問いかける。そして、こうした製品に対して各社が投じている費用は、そこから得ている収入を大きく上回っていると指摘する。
同氏は議論を現実の安全やインフラの問題にまで広げ、欧州で血液を保管する冷蔵庫がハッキングされた事例を挙げる。AIブームに伴う技術的リスクは抽象的な話ではない、というわけだ。総じて、コストは高すぎ、便益は現実のものではないというのが同氏の判断である。
政治的な側面についても言及は鮮明だ。こうしたコストを政治権力と結びつけて見れば、光景はさらに芳しくないとパテル氏は言う。CEOたちがホワイトハウスでトランプ大統領と握手し、メキシコ湾を「アメリカ湾」に改名しようとし、国民が望まない宴会場の費用を負担している、というのだ。同氏はこれを露骨な「クリプト腐敗」と呼び、それでもなお生み出されるのは「スロップ」、すなわち低品質で大量生成されたコンテンツにすぎないと断じる。
では出口はどこにあるのか。パテル氏の答えは複雑ではない。AI業界はまず製品を良くするしかない、というものだ。誰もが説得される必要も、広告宣伝に頼る必要もなく、使うだけで生活が良くなると実感できるようになって初めて、業界は現在の疑念と行き詰まりから抜け出せるのだと同氏は論じている。
なお、この記事はウィリソン氏が収集した引用であり、業界分析の報告書ではない。2026年時点のAI産業の状況に対する、経験豊富なテクノロジーメディア関係者の辛辣な批評として、経済モデル、製品の成熟度、環境負荷、政治倫理といった複数の論点を含んでいる。