ProgFormer:縦断的脳MRI予測のための階層的ボクセル拡散トランスフォーマー
arXivで公開された新しい論文は、将来の脳構造MRIを予測するために、ボクセル空間で直接動作する階層的拡散トランスフォーマー「ProgFormer」を提案する。粗い経路で全体的な脳構造と縦断的コンテキストをモデル化し、細かい経路で局所的なボクセル単位の精緻化を行う。条件付きフローマッチングにより速度場を直接推定し、潜在表現の再構成に伴う情報損失を回避する。ADNI、AIBL、OASISの3つのベンチマークにおけるペアワイズおよびトラジェクトリ設定の実験で、最先端手法を上回る性能を示した。
脳の将来の構造MRIを予測することは、神経画像解析において難しい課題である。縦断的な変化は多くの場合わずかで、特定の解剖学的領域に限られる一方、被験者固有の脳構造の大部分は時間が経っても安定している。そのため、理想的なモデルは、脳全体の構造的一貫性を保ちながら、細かい疾患進行にも敏感でなければならない。既存の潜在空間ベースの手法は計算効率は良いが、圧縮・再構成の過程で情報が失われる恐れがある。一方、直接ボクセル空間で扱う手法は潜在表現の再構成を避けられるものの、脳構造と進行関連変化を単一の予測経路でまとめてモデル化することが多く、支配的な安定構造によって微妙な局所変化が覆い隠されてしまう可能性があった。
これらの課題に応えるため、本論文ではProgFormerを提案している。これは、階層的なボクセル空間拡散トランスフォーマーであり、粗い経路と細かい経路の2つで構成される。粗い経路は3Dパッチトークンから主要な体積予測を行い、脳全体の構造と縦断的コンテキストをモデル化する。細かい経路は、粗い経路の表現を時空間的な基盤として利用し、個々のパッチ内でボクセル単位の精緻化を実行する。2つの経路は、条件付きフローマッチングによりボクセル空間内で速度場を共同で推定する。これにより、別途学習された画像オートエンコーダを必要とせず、エンドツーエンドの予測が可能になる。予測された将来のスキャンは、推定された速度場を一連のオイラー法ステップで積分し、ガウスノイズから生成される。
ProgFormerの設計上の利点は、粗い経路が安定した全体構造の中での微細な変化の埋没を防ぎ、細かい経路が潜在空間の歪みを導入せずに局所的な詳細を復元できる点にある。速度場の推定がすべて元のボクセル空間で行われるため、潜在空間ベース手法の情報ボトルネックを回避できるとともに、単一経路では見落とされがちな局所変化にも対処できる。
論文では、縦断脳画像のベンチマークとして広く使われるADNI、AIBL、OASISの3つのデータセットを用いて、ペアワイズ設定とトラジェクトリ設定の両方で実験を行った。複数の最先端手法との比較により、ProgFormerは予測精度と構造的一貫性の両面で優れた結果を示し、階層的な2経路設計の有効性が確認された。
本論文はDexuan Ding氏らによって執筆され、2026年7月30日にarXivに投稿された。識別子はarXiv:2607.27537で、コンピュータビジョンとパターン認識(cs.CV)に分類される。DataCiteを通じてarXiv DOI(https://doi.org/10.48550/arXiv.2607.27537)が割り当てられており、現在登録手続き中である。arXivのページでは、PDFやHTML本文に加え、引用ツールや関連論文へのリンクも提供されている。