大規模言語モデル(LLM)の急速な進歩により、自然言語がプログラミング言語などの形式言語を完全に置き換えられるという議論が活発になっています。しかし、ICML 2026で発表予定の立場論文「Position: Natural Language Should Not Fully Replace Formal Languages」は、この見解に異議を唱えます。イスラエルの研究者Eitan Wagner氏とその共著者は、自然言語は本来、開かれた文脈での過小特定(underspecification)に最適化されており、高い特異性を要するタスクには非効率であると主張します。
論文では、情報理論に基づく「タスク特異性」(task specificity)の形式的枠組みを導入します。これは、ユーザーの要件が与えられたときの出力空間(例えば、可能な画像すべて)における不確実性の削減量として定義されます。著者らは「特異性交差定理」を証明し、タスク要件が特定の閾値を超えると、自然言語で要件を表現するコストが形式言語で直接記述するコストを上回ることを示しました。
画像生成、コード合成、音声制作などのケーススタディを通じて、自然言語は創造的で制約の少ないタスク(例:「夕日の風景を生成」)に優れる一方、正確な制御が必要なタスク(例:「512x512ピクセル、RGB値(255,0,0)の純赤画像を生成」)では形式言語が効率的であることを実証しています。コード生成においても、高レベルの機能要件は自然言語で記述できますが、具体的なアルゴリズムやデータ型の実装には形式言語の方が信頼性が高いと論じています。
論文は、自然言語と形式言語は補完的なツールであると結論づけ、ユーザーがタスクの特異性に応じて両者を切り替えられるハイブリッドシステムの開発を提唱しています。この研究は、AIシステムの設計と人間とAIの相互作用に重要な示唆を与えるものであり、特に厳密な制御が必要な領域では形式言語が不可欠であることを強調しています。本論文はICML 2026のポジショントラックで発表される予定です。