ロボットによる放射線源位置推定(RSL)技術は、原子力安全や環境モニタリング、放射性廃棄物処理などの分野で重要な役割を果たします。従来の手法では、ロボットが線源に接近するための経路計画を事前に立てる必要がありました。しかし、線源に近づくことはロボットの放射線損傷リスクを高め、また経路計画アルゴリズムがRSL専用に設計されているため、放射性環境でのミッション柔軟性が制限されるという問題がありました。
これらの課題に対処するため、韓国ソウル大学の研究チームは、物理情報機械学習(PIML)を活用した自動化フレームワークを開発しました。このフレームワークの核心は、未知の障害物によるガンマ線フラックス信号の減衰を処理する物理に着想を得たモデルテンソルを設計した点にあります。複数のPIMLモデルを並列に計算することで、異なる計測経路からのデータを統合し、線源位置推定のロバスト性と精度を大幅に向上させることができます。
研究チームは、まずモンテカルロ粒子輸送に基づく高忠実度シミュレーション環境で提案手法を評価しました。シミュレーションでは、空間スケール(数メートルから数十メートル)、放射線源タイプ(点源や面源)、障害物材料(コンクリート、鉄鋼など)と幾何形状、ロボット軌道など多様なランダム化シナリオを網羅しました。その結果、ロボットの計測経路が線源から遠く離れている場合でも、高い位置推定精度を維持できることが確認されました。
さらに、シミュレーションに含まれていない構成での物理実験も実施し、実環境における有効性を検証しました。実際のロボット展開では、連続学習技術を導入し、オンライン動作中にモデルパラメータを継続的に更新することで、環境変化やセンサドリフトに適応できるようにしました。これにより、長期運用における実用性と安定性が向上します。
本研究は、ロボットの放射線知覚を点単位のフラックス検出から空間知能へと進化させるものであり、原子力施設の点検、放射性物質漏洩時の緊急対応、宇宙探査などの分野における自律ロボット応用の基盤を築くものです。関連論文はarXivプレプリント(arXiv:2606.27624)として公開されており、18ページの本文、14の図表、2つのテーブルで構成されています。