睡眠段階の分類は、睡眠障害の診断と管理において極めて重要な役割を果たしている。しかし、既存の自動ステージング研究の多くは、特定の専門家が注釈した単一の参照睡眠図を正解ラベルとして用いてモデルを評価しており、スコアラー間のばらつきが十分に考慮されていない。このようなラベル変動はモデルの学習を不安定にし、評価指標の信頼性を損なう可能性がある。そこで本研究では、複数の専門家によるスコアリング行動を統計的にモデル化し、よりロバストな参照睡眠図を構築する「学習ベースの睡眠図(LBH)」というフレームワークを提案している。論文は2026年8月12日にarXivへ投稿され、機械学習(cs.LG)および人工知能(cs.AI)として分類されている。
提案手法では、公開データセットであるDOD-HとDOD-Oを利用する。EEG(C3-M2)と顎筋電図(chin EMG)を30秒エポックに分割し、各モダリティから30個の特徴量を抽出する。EEGとEMGを併用する場合は合計60特徴量となる。LBHは、機械学習モデルから得られる混同行列を使用して、各スコアラーの睡眠段階固有の注釈傾向をモデル化する。混同行列を列正規化することにより、各スコアラーが特定のラベルを付けたときに、真の睡眠段階が各クラスである確率を推定できる。その後、これらの確率を複数スコアラー間で集約し、各エポックの最終ラベルを決定する。
実験では、ランダムフォレスト(RF)、サポートベクターマシン(SVM)、多層パーセプトロン(MLP)という3種類の分類器を、EEGのみとEEG+EMGの2つの設定で評価し、データセット睡眠図(DH)および最良スコアラー睡眠図(BSH)と比較した。その結果、LBHは全体的な性能を一貫して向上させた。最も良い結果が得られたのはランダムフォレストとEEG+EMGの組み合わせであり、DOD-Hでは精度86.07%、適合率85.46%、F1スコア85.29%、DOD-Oでは精度86.04%、適合率85.21%、F1スコア84.70%を達成した。
これらの発見は、個々の専門家の情報を破棄せずに、パーソナライズド・スコアラー・モデリングによって参照睡眠図の品質を改善できることを示している。単一のスコアラーのみに依存する従来手法と比較して、LBHは複数専門家の多様な判断を活用し、より安定したラベルを提供できる。自動睡眠ステージングモデルの開発や、多施設データセットにおける評価基準の構築に対して、このアプローチは有力な選択肢となるだろう。今後の研究では、より複雑なスコアラーモデルや多様な臨床データへの拡張が期待される。