可変形線状物体(DLO)の動的制御は、ロボティクス分野における長年の難題である。ロープやケーブルのような対象は、劣駆動で高次元のダイナミクスを持ち、変形応答に遅れが生じるうえ、障害物制約下では複数の実行可能な運動が存在する。Youyuan Long氏らによる本論文は、こうした物体の俊敏な操作を目指すベイズ型マルチモーダルモデル予測制御(MPC)フレームワーク「BM2PC」を提案している。
BM2PCの中心となる考え方は、「制御を推論として捉える(control-as-inference)」事後分布の枠組みに基づいている。従来のMPCが単一の最適制御シーケンスを求めるのに対し、本手法はマルチモーダル計画を集合最適化問題として定式化し、制御品質と行動の多様性のバランスを取ることで、複数の実行可能な制御モードを同時に保持する。このマルチモーダル性を計算上実行可能にするため、効率的な逐次更新機構を設計し、わずかな追加計算コストで複数の有望な制御モードを維持できるようにしている。
実環境への展開に向けて、BM2PCは実行ダイナミクスモデルを組み込んでいる。これはエンドエフェクタの実際の動きを予測し、高速操作中に生じる実行上のずれを補償するもので、応答が速くタイミングに敏感なロープ操作では特に重要となる。
評価では、シミュレーションと実機の両方でロープ追従と障害物回避を検証し、さらにシミュレーション上で外乱抑制も評価している。軌道追従では、タスク固有のポリシー学習やファインチューニングを行わなくても、学習ベースのベースラインよりも未見の軌道への汎化性能が高いことが示された。実機実験では正確な長期的追従を実現し、最も長いタスクにおいてRMSEを44.0%削減した。障害物回避では、既存のマルチモーダルMPC手法と同等の性能を保ちつつ、計画時間を29%から66%短縮している。
これらの結果は、BM2PCが単一のMPCフレームワーク内で正確な動的制御と効率的なマルチモーダル計画を両立できることを示している。コア実装と補足動画はhttps://github.com/Longyouyuan/BM2PCで公開されている。本論文はロボティクス(cs.RO)分野に属し、arXiv番号は2610.31852である。