四足ロボットは通常、四脚歩行で移動するが、狭い場所や制約の多い環境では、壁に前脚を預けて二足歩行する「壁支持二足歩行」が有効な場合がある。しかし、このようなハイブリッドな運動のリアルタイム軌道最適化は容易ではない。コントローラは、重心(CoM)と姿勢の連続軌道だけでなく、離散的な接触点の位置も同時に計画しなければならず、さらに片側接触制約、非駆動性、ダイナミクスの切り替わりといった非線形問題に対処する必要がある。IEEE/RSJ IROS 2026に採択された論文は、この課題に階層型の計画・制御フレームワークで取り組んでいる。
フレームワークの上位層に位置するのが、マルチレート非線形モデル予測制御(MR-NMPC)である。従来のヒューリスティックな足配置戦略に頼るのではなく、MR-NMPCは単剛体(SRB)ダイナミクスモデルを用いて、接触点の離散時間軌道とCoM・姿勢の連続時間軌道を同一のマルチレート最適制御問題として同時に最適化する。「マルチレート」とは、変数ごとに更新周波数を変えることで、計算負荷と動的応答のバランスを取ることを意味する。接触点計画を最適化フレームワークに直接組み込むことで、経験則に基づく足配置よりも動的安定性が大幅に向上すると著者らは主張している。
下位層では、仮想制約と二次計画(QP)に基づく非線形全身制御器(WBC)が用いられる。その役割は、ロボットの全次数ダイナミクスを強制し、MR-NMPCが生成した参照軌道を正確に追従することである。上位の計画と下位の追従を分離することで、最適化モデルの扱いやすさを保ちつつ、下位制御のリアルタイム性とロバスト性を確保している。
提案手法の有効性を検証するため、著者らはUnitree A1四足ロボットをテストベッドとした数値シミュレーションを多数実施した。シミュレーションには、粗い地形上での壁支持二足歩行や、制約環境における外部外乱が含まれる。結果として、ロボットはこれらの条件下で堅牢に歩行できることが示された。さらに重要なのは、ヒューリスティックな足配置を用いる従来のMPCと比較して、MR-NMPCは高速で不整地形を通過する際の成功率が2.9倍高いという点である。この比較は、接触点計画をマルチレート最適化に組み込むことが動的性能の実質的な向上につながることを示している。
本論文はTaizoon Chunawalaら3名によるもので、2026年7月2日にarXiv(2607.01574)へ投稿された。ロボティクス(cs.RO)と最適化・制御(math.OC)の学際領域に属する。現時点ではシミュレーション検証に限られているが、このフレームワークは制約の厳しい環境における四足ロボットの運動計画に新たな視点を提供し、将来の実機実験への展開が期待される。