ロボティクス分野において、事前知識を活用して継続的にタスクへ適応できる汎用ロボットの構築は依然として大きな課題である。従来の研究では、パラメータ効率の良いファインチューニングによって破滅的忘却を緩和する手法が主流であったが、それらは単一タスクへの適応を前提としており、再利用可能なスキルの抽出やスキル間の相互作用のモデル化を効果的に行えないという問題があった。近年では、プロンプト学習によってこれらの問題を解決しようとする試みもある。これに対して本論文は、生涯動的エキスパート混合(LiMoDE)という、生涯ロボットマニピュレーションのための新しい二段階学習スキームをアーキテクチャの観点から提案する。
LiMoDEの中心的なアイデアは、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャを生涯学習のシナリオに導入し、ロボットマニピュレーションの特性に合わせて設計することにある。第一段階である多タスク事前学習では、動的MoE構造を提案し、事前知識を学習する。この構造では、運動情報に基づいて可変数の異種エキスパートが動的に活性化され、異なる短期マニピュレーションに対応する。これにより、モデルは操作の各セグメントに最も関連するエキスパートを呼び出すことができ、多様なスキルパターンをより効果的に捉えることが可能となる。
第二段階であるタスク適応では、生涯MoE適応メカニズム(LiMoEAM)を設計する。このメカニズムは生涯エキスパートを学習し、それらを凍結された事前学習済みエキスパートと動的に組み合わせて新タスクに対処する。凍結エキスパートは事前学習で得られた汎用的な事前知識を保持し、生涯エキスパートは新タスク固有のパターンに特化する。両者を動的に組み合わせることで、安定性と可塑性のバランスを実現し、適応プロセスにおける知識転移を促進する。
LiMoDEの有効性を検証するため、著者らはシミュレーション上の生涯学習ベンチマークと実世界のロボットタスクの両方で広範な実験を行った。実験結果は、LiMoDEが優れた性能を達成すると同時に、強力な生涯適応能力を示すことを明らかにしている。特筆すべきは、本手法が適度な数の追加学習可能パラメータと推論オーバーヘッドしか導入しない点であり、実用性と効率の間で良好なバランスを取っていることを示している。
全体として、LiMoDEは動的MoEと生涯MoE適応メカニズムを通じて、スキル抽出、知識転移、破滅的忘却の緩和を二段階学習フレームワークに統合した、生涯ロボットマニピュレーションのための新たなアーキテクチャの方向性を提示している。本論文はarXiv(番号2606.26183)に投稿されており、ロボティクス(cs.RO)に分類されるほか、人工知能(cs.AI)および機械学習(cs.LG)の分野にも関連している。