機械には見えない:完全な市場センサスに基づくAI飲食店推薦の監査
バリ島チャングーとウブドの全4,776軒の飲食店を対象にした監査で、85.6%の店舗がChatGPT・Claude・Gemini・Perplexityのいずれからも一度も推薦されていないことが判明。推薦に入るかはレビュー数・公式サイト・価格情報・第三者言及などの文書化シグナルに左右され、星評価は推薦内の順位にのみ影響する。幻覚は0.08%と稀だが、閉店済み店舗を93回推薦しており、実務上の主な問題は情報の陳腐化である。
AIアシスタントが地域の店舗を探す主要な入り口になりつつある一方、どの店舗が推薦され、どの店舗が無視されるのかについてはほとんど分かっていない。この論文は、インドネシア・バリ島のチャングーとウブドという2つの明確に区切られた市場を対象に、4776軒のカフェ・レストラン・バーを完全に列挙し、ChatGPT、Claude、Gemini、Perplexityの4つのAIシステムが96のペルソナ条件付きクエリに対して7日間で生成した2208件の検索連動型応答を評価した、初の「センサス準拠」監査である。
結果は厳しい。全施設の85.6%がどのシステムからも一度も推薦されなかった。50件以上のレビューを持つ既存店舗に限定しても、72.6%がまったく推薦されていない。研究者は、この不可視性がランダムではなく、店舗のオンライン上の文書化状況と構造的に関連していると指摘する。
推薦の「参入」には、レビュー件数(オッズ比1.64)、自社ウェブサイト(1.92)、価格情報の記載(1.54)、第三者ウェブでの言及(1.44)が有意に関連していた。一方、星評価は参入には影響せず(オッズ比0.89)、推薦された店舗内での順位にのみ影響した(1.17)。つまり、高評価は「リストに入るか」ではなく「リスト内で上に来るか」を決める。FoursquareなどのオープンなPOIデータセットへの登録は、どちらの段階でも正の効果が見られなかった。
捏造(ハルシネーション)は全言及の0.08%と稀だったが、閉店済みの店舗を推薦した事例が93件あった。つまり、実務上の主な障害は幻覚ではなく、情報の鮮度(陳腐化)である。システム間の上位20件の一致率はJaccard係数で0.33〜0.54と低く、2週間後の再テストでも、同日の再実行と同程度の類似性しかなかった。これは回答の変動が時間変化ではなく、サンプリングの確率性によることを示す。研究者はプロトコル、レジストリ構築方法、派生データを公開している。