イーロン・マスクのAIデータセンター、大気浄化法の執行権を巡る争いに
xAI社のデータセンター向け無許可ガスタービンに関する訴訟が、米政府の大気汚染規制権限を試すものとなっている。司法省は国家安全保障を理由に介入し、行政権限の拡大と市民による大気浄化法執行の制限につながる可能性がある。
イーロン・マスク氏のAI企業xAIが運営するデータセンターを巡る訴訟が、米国政府の大気汚染規制に対する権限を試す前例のない争いとなっている。問題の発端は、xAIがミシシッピ州サウスヘイブンに設置した57基のガスタービンである。これらのタービンは同社のAIアシスタント「Grok」用データセンターに電力を供給しているが、大気許可証を取得しておらず、環境団体から違法行為として告発されていた。
米司法省は先週、国家安全保障を理由にこの訴訟に介入する意向を表明。同省は、連邦政府が許可証なしでの運転を認める決定をした場合、地域住民や環境団体が差し止め訴訟を起こす権利を否定できるとの立場を取っている。この動きに対し、元環境保護庁(EPA)高官のデービッド・ウールマン氏は、「司法省による空前の大気浄化法攻撃が成功すれば、どの政権も自らの政治的優先事項に合わない市民訴訟を封じ込めるようになる」と警告する。
NAACP(全米黒人地位向上協会)はxAIを提訴し、タービンからの窒素酸化物(NOx)排出が地域の大気質を悪化させ、住民の健康を脅かしていると主張。元EPA職員の試算によると、57基のタービンは年間5,300トンのNOxを排出し、同地域最大の汚染源となる。NOxはぜんそくや呼吸器疾患の原因となる。
xAIの法務責任者ジェームズ・バーナム氏は司法省の介入に謝意を示した。バーナム氏はトランプ政権で高官を務めた経歴を持つ。ミシシッピ州当局はタービンを「一時的」と判断し許可証を不要としたが、EPAは今年1月に一時的タービンにも排出規制が適用されることを明確化している。
環境団体「アースジャスティス」の弁護士ローラ・トムズ氏は「司法省のような主張は前例がなく、法的にも道徳的にも妥当性を欠く」と批判。この訴訟の行方は、AIブームで急増するデータセンターや他の産業の環境規制の在り方に広範な影響を及ぼす可能性がある。