GPS・通信が遮断された環境における地上目標保護のための分散型UAV群
軍事作戦におけるUAVの使用増加に伴い、UAV攻撃に対する防御システムの需要が高まっている。本論文では、GPSと通信が利用できない環境において、自律型UAV群を用いて地上目標を保護する手法を提案する。外部通信や衛星測位に依存せず、機載センサと相対測定のみで目標追跡と群れの調整を行い、目標の動きに適応する分散型包囲技術を採用する。実際のロボットによる実験で、敵対UAVの検出、包囲、迎撃の有効性を実証した。
近年、軍事作戦におけるUAV(無人航空機)の利用が急速に拡大しており、それに伴いUAV攻撃から重要目標を守る防御システムの必要性が高まっています。既存の防御手段の多くは、UAV同士の通信やGPS(全地球測位システム)に依存していますが、現代の戦場ではこれらのインフラが意図的に妨害されることが少なくありません。
この課題に対処するため、研究チームは通信とGPSが完全に遮断された環境でも動作可能な、自律型UAV群による地上目標保護手法を提案しました。本手法では、各UAVが搭載センサ(カメラやレーダーなど)のみを用いて周囲を認識し、相対位置測定に基づいて他のUAVや目標の状態を推定します。
具体的には、カルマンフィルタを応用し、相対測定値のみから未知の目標の運動状態とUAV群内の各機体の位置を高精度に推定します。さらに、目標の動きに適応しながら包囲網を形成する分散型の群れ制御アルゴリズムを開発しました。このアルゴリズムは中央制御や機体間通信を必要とせず、各UAVが独立に判断しながらも全体として一貫した包囲形状を維持します。これにより、目標が急激に進路を変えたり加速したりしても、常に最適な包囲配置を保ち、防御範囲を最大化できます。
研究チームは実ロボットを用いた大規模な実験を実施しました。実験では、敵対UAVが様々な速度や機動パターンで侵入するシナリオを再現しました。結果、提案手法は敵対UAVを迅速に検出し、包囲し、迎撃することに成功しました。特に、包囲形成後の維持性能が高く、目標が急旋回しても包囲網が崩れることはありませんでした。これらの成果は、妨害環境下でも信頼性の高い自律防御システムの実現可能性を強く示唆しています。
本論文は2026年のIEEE/RSJ国際知能ロボットシステム会議(IROS 2026)に採択されており、今後の軍事・防衛技術への応用が期待されます。特に、通信やGPSに依存しないという特性から、電子的な妨害が頻発する現代戦において重要な役割を果たす可能性があります。