開発者のDrew Breunig氏は、動作するNintendo Entertainment System(NES)の6502 CPUエミュレータをQwen3.5-4Bモデルの重みに焼き込んだプロジェクト「nesformer」を公開した。発端はDivyansh Agrawal氏による先行プロジェクト「qwenputer」で、Breunig氏はその手法に触発され、従来のソフトウェアエミュレータではなくモデルパラメータの中にチップとメモリの動作を直接埋め込むことを試みた。その結果、『スーパーマリオブラザーズ』などのNES ROMをQwenモデル内部で実行できるようになったが、速度は非常に遅い。
Breunig氏はHacker Newsのコメントで、このシステムを構築するために使ったOpus 5.5へのプロンプトを明かしている。最初のプロンプトでは、qwenputerの記事と関連ソースコードを読んだ上で、MISTRなどのFPGAプロジェクトで行われているように、NESのチップとRAMをこの技術でエミュレートできるかどうかを探るよう指示。さらに、実現可能ならどのくらいのサイズのモデルが必要か、より小型で高速なモデルを使えば標準クロック速度に到達できるかも検討させた。続くプロンプトでは「面白半分でいいから作ってみよう。遅くても構わない。重みと、ROMを指定して実行できるCLIが欲しい」と、実装に踏み切るよう指示している。
注目すべき点として、OpusはChristopher Pow氏が15年前に公開したNES CPUの準拠テスト群を発見し、これを利用した。このテストスイートはもともとNES CPU実装の互換性と正確性を検証するためのもので、モデル内に埋め込まれたエミュレータがハードウェアの振る舞いをどれだけ忠実に再現しているかを評価する基準として機能した。
技術的には、このプロジェクトは「モデルの重みにプログラムロジックを載せる」という探求の延長線上にある。エミュレータを通常のコードとして書くのではなく、ニューラルネットワークにCPUの命令実行やメモリ読み書きに関する多数の状態遷移を暗黙的に学習させるアプローチだ。現状の実行速度はリアルタイムには遠く及ばないものの、複雑な状態機械をパラメータ空間に圧縮できる可能性を示しており、大規模言語モデルをハードウェアエミュレーションやゲーム実行といった非定型タスクに応用するための実験例となる。コードと重みはGitHubで公開されており、関心のある研究者が再現・改善できる。