カナダ国家人工知能戦略:AI for All
カナダ政府は、信頼・機会・主権を中核とする国家AI戦略「AI for All」を発表した。同戦略は6つの柱で構成され、市民保護、経済活性化、主権AI基盤の構築、国内企業の育成、国際連携を推進。AIの広範な導入により、2030年までに年間1,870億カナダドルの経済効果を見込む。
カナダ政府はこのほど、国家人工知能戦略「AI for All」を正式に発表した。同戦略は、イノベーション・科学・経済開発省が主導し、全国から11,000件以上の意見徴収と28人の専門家タスクフォースの助言を基に策定された。戦略の核心は「信頼」「機会」「主権」の3つの価値である。カナダは、国民がAIを信頼して初めて積極的に採用し、その恩恵を享受できると考える。そして、その恩恵を持続可能にするには、カナダ自身が技術基盤を主体的にコントロールできる「主権」が不可欠だ。この3つの価値は、6つの柱に具現化されている。第1の柱は「カナダ人の保護と民主主義の擁護」。厳格な安全規則と保護措置を講じ、AIのリスクや悪影響から市民を守る。第2の柱は「カナダ人のエンパワーメント」。教育と訓練を通じて国民のAIリテラシーを高め、誰もがAIの恩恵にアクセスできるようにする。第3の柱は「AI導入による共有繁栄」。中小企業や公共サービスにおけるAI活用を促進し、経済全体の生産性向上を図る。第4の柱は「カナダ主権のAI基盤構築」。計算資源、データ、人材、インフラを国内で整備し、外国依存から脱却する。第5の柱は「カナダのAIチャンピオン企業の育成・拡大」。国際競争力を持つ国内企業を支援する。第6の柱は「信頼できる国際パートナーシップと同盟の構築」。価値観を共有する国々と連携し、国際的なAI標準やガバナンスを共に策定する。カナダのAI産業はすでに強固な基盤を持つ。3,500以上の企業がAI分野で活動し、直接雇用は15万人、累計ベンチャーキャピタル調達額は370億カナダドルを超える。戦略の試算によれば、AIの広範な導入により、労働生産性は年間0.3%から1.1%向上し、2030年には生成AIだけで年間1,870億カナダドルの経済効果が期待される。カナダのAIエコシステムは、アプリケーション、モデル、データセンター、ハードウェア、エネルギーまで全バリューチェーンにわたって成熟している。アプリケーション分野ではClio(法律)、Sanctuary AI(汎用ロボット)、Ada(カスタマーサービス)など、モデル分野ではCohere(基盤モデル)、Coveo(エンタープライズ検索)、OpenText(情報管理)などが存在する。データセンターではDenvr、eStruxture、ThinkOnが大規模構築を進めており、ハードウェアではHypertecやMicro Logicがサーバーやネットワーク機器を、RanovusやCelesticaがAIチップ関連製品を提供する。また、Rogers、Bell、Telusがネットワークインフラを支える。カナダはGPUの世界的な製造能力に依存しているが、ハードウェアバリューチェーンは成長している。エネルギー面では、カナダの電力網は持続可能で予測可能だが、現在は容量制約がある。そのため、カナダは新たな国家電力戦略を打ち出し、2050年までに電力インフラを倍増させ、 sovereignなAIデータセンター建設を支える計画だ。さらに、カナダは世界クラスの研究機関(CIFAR、Amii、Mila、Vector)やグローバルイノベーションクラスターを有し、AI手法と安全性の研究を推進している。戦略は、技術的・社会的・地政学的変化に適応するため、ダイナミズムへのコミットメントも含む。政府は、この「AI for All」の瞬間を捉え、AIを国民生活の向上、文化の保護、民主主義の強化に役立てる決意を示している。