ロボットポリシー学習におけるシミュレーションから現実世界への転送(Sim2Real)は、シミュレーションと現実の間の不一致によって長く困難に直面してきた。既存の手法は通常、視覚的な外観の差異と動力学の差異を別々に扱い、独立した適応モジュールでそれぞれを補正する。両方のギャップが同時に存在する場合には、それらのモジュールを組み合わせたり積み重ねたりする。しかし、そもそもSim2Real転送が可能である根拠は、シミュレーションと現実のタスク間に共有構造が存在することにある。つまり、等価な構成から等価な行動を取れば、レンダリングや物理のドメイン固有の違いにかかわらず、等価な長期結果が得られるという点である。
この考えに基づき、Yunfu DengとJosiah P. Hannaによる論文「BIFROST: Bridging Invariant Feature Representation for Observation-space Sim2Real Transfer」では、生の観測からこの共有構造を特定し活用して、ゼロショット転送可能なポリシーを訓練できるかどうかを探求している。提案手法BIFROSTの核心は、ペアになったクロスドメインデータ上で共有履歴エンコーダを学習することにある。クロスドメイン双模倣(bisimulation)目的関数を採用し、等価な長期行動につながる観測-行動系列を、それがどちらのドメインに由来するかに関係なく、潜在空間内で互いに近接する状態にマッピングする。これにより、エンコーダが学習する潜在表現はドメイン不変な特徴を捉え、ドメイン固有のレンダリングや動力学の干扰をフィルタリングする。
訓練段階では、BIFROSTはシミュレーション環境内でこれらの潜在状態に基づいてポリシーを訓練する。潜在空間がクロスドメインで等価な行動を既に整列させているため、ポリシーは現実世界での微調整なしに直接展開でき、ゼロショット転送が実現する。著者らは複数のタスクで有効性を検証した。Sim2Simの視覚ナビゲーションタスク、Sim2Realの接触リッチ操作タスク、そしてビジュアルサーボタスクである。実験結果は、視覚ドメインギャップと動力学ドメインギャップが同時に存在する状況下で、BIFROSTが効果的な転送を達成する一方、従来のドメイン適応手法や共訓練ベースラインは性能が振るわないか失敗することを示している。
本研究はSim2Real転送に新たな視点を提供する。個々のドメインギャップを別々に修復するのではなく、データからクロスドメインで共有される抽象表現を学習し、タスク固有の構造不変性を利用して差異を埋めるのである。BIFROSTのクロスドメイン双模倣目的関数は、生の観測から不変特徴を抽出するための実用的な枠組みを提供し、現実世界におけるロボットポリシーのゼロショット展開を促進する可能性がある。論文は2026年7月1日に提出され、ロボティクス(cs.RO)と機械学習(cs.LG)の交叉領域に属する。