Anthropicは、重要なオープンソースプロジェクト向けの無料・オプトイン型脆弱性スキャナー「OSS Scanner」を公開した。Claude Mythosを含む同社最強のモデルで登録済みのコードベースを監査し、報告書を人によるレビューを挟まずに直接メンテナーへ送る仕組みだ。これにより発見は速くなる一方、問題の切り分け作業はプロジェクトチームへ移ることになる。
Anthropicによると、10月8日の開始から11日間で、重大77件・高リスク803件のモデル評価による指摘が報告された。10月19日時点で約650件の申請のうち114プロジェクトが受け入れられている。監査は同社のインフラ上で無料で実行され、メンテナーがDockerfileを用意し、ネットワーク接続のない隔離された仮想マシン内で実施される。
精度については、Anthropicのペネトレーションテスターが48プロジェクトの重大・高リスク指摘97件を確認した。うち85件(88%)が同社の協調的脆弱性開示(CVD)プロセスの基準を満たし、11件は実在するが既知の問題や他のスキャン結果と重複、無効だったのは1件のみだった。メンテナー側のデータも同方向を示す。wolfSSLは74件の報告を受け、2件を除き有効で、うち5件がCVEとなった。curlは高リスクのHTTP/2アップロードにおけるuse-after-free、CVE-2026-92392を修正した。curl 8.12.0から8.22.0が影響を受け、2026年10月14日公開の8.23.0で修正されている。
OSS ScannerはAnthropicのFrontier Red TeamとSafeguards Researchチームが共同で運営しており、設計はGoogleのOSS-Fuzzを参考にしつつ、ファザーを言語モデルに置き換えている。狙いはレビューのボトルネック解消だ。過去6か月で同社のモデルは2万9000件超の候補脆弱性を検出したが、人間のレビュアーが仕分けたのは約6000件にとどまり、検証の有無にかかわらず全件を求めたメンテナーへ約5000件が直接送られた。OSS Scannerはこうした場当たり的な依頼を正式なオプトイン制度に変える。
登録は、anthropics/oss-scannerリポジトリへのPRでプロジェクトテンプレートに基づくprojects/<project>.yamlを追加する形で行う。必須項目はリポジトリ、主要連絡先、Dockerfileのパスで、任意項目には脅威モデル、暗号化報告用のPGP、自動CC、ホームページ、無効化フラグがある。Dockerfileはネットワークありの段階でプロジェクトをビルドし、その後VMはインターネットのない環境へ移されて監査が行われる。パイプライン内のエージェントはバグの再確認、根本原因分析、パッチ提案を行う。各報告には自己完結型の再現手順とバグの説明が含まれ、可能な場合は問題を導入したコミットの特定や候補パッチも添付される。任意のthreat_model.mdで敵対的入力、対象外コード、深刻度の基準を定義できるが、なければスキャナーが推測する。
他のオープンソースセキュリティ施策との違いは、LLMエージェントがソースを監査し、メンテナーの負担がゼロで、メンテナーに届く前に人によるレビューがない点にある。GoogleのOSS-Fuzzはファジングとサニタイザーで1万3000件超の脆弱性を発見し、OpenAIのCodex for OSSは承認されたメンテナーがCodexセキュリティエージェントを実行、DeepMindのCodeMenderはGemini Deep Thinkで発見と修正を行い、上流に送る前に全パッチをレビューする。なおOSS Scannerは未検証の指摘に開示期限を設けておらず、OSS-Fuzzの90日(または修正リリース後14日の猶予)とは異なる。
Anthropicはこの進展をベンチマークの向上と結びつけている。CyberGymではLLMが脆弱性を発見する割合が20%未満から85%超へと上昇した。10月2日時点で、より広範なCVDダッシュボードには591プロジェクトの6157件の開示済み脆弱性が掲載され、うち516件が修正済みだという。