AMDのフィジカルAI戦略が具体化、Ryzen AI Embedded X100を発表
AMDはAdvancing AI基調講演で、Strix Haloベースの組み込み向けSoC「Ryzen AI Embedded X100」、Kriaシステムオンモジュール、開発プラットフォームを発表。ロボティクス/エッジAI市場(フィジカルAI)を狙い、NVIDIA Jetsonと競合する。産業向け温度範囲、リアルタイム性能、10年ライフサイクルに対応。
AMDはAdvancing AI基調講演で、多数のサーバー向けハードウェアと並行して、フィジカルAI(ロボティクスおよびエッジAI市場)向けの新製品を発表した。EPYC CPUやInstinct GPU、Pensandoネットワーク中心の発表の中でやや異色ではあったが、AIサーバー以外におけるAMDの優先事項を示す重要な内容といえる。
AIサーバー市場でのシェア拡大は依然AMDの最優先課題だが、同社は次の成長分野にも目を向けている。データセンターAIブームで潤沢なキャッシュを手にしたAMDは、中核市場の防衛だけでなく、新興・周辺市場への投資を拡大できる立場にある。AMDが「次なる企業向けAIの最前線」と見るのがフィジカルAIだ。
その背景には、AIモデルの急速な進歩がある。今年前半だけでもモデルの精度は向上し、「十分な成果」を得るために必要なモデルサイズは縮小し続けている。その結果、ロボットハードウェアやエッジシステムの能力に、ようやく高性能AIモデルが追いつき始めた。ロボット向けに汎用AIを提供する計算コストや難易度も下がっており、メモリ価格の高騰という課題はあるものの、市場投入のタイミングは適切だ。
ハードウェア面の目玉はRyzen AI Embedded X100だ。これは、Ryzen AI Maxシリーズと同じStrix Haloシリコンを採用した組み込み向けSoCで、AMDのRyzen AI Embedded製品ラインアップの最後のピースとされる。最大16コアのZen 5 CPU、最大40CUのRDNA 3.5 iGPU、256ビットLPDDR5Xメモリバスを備え、従来のP100シリーズより高い性能を提供する。
X100は産業向けに完全認定されており、動作温度範囲は-40℃〜105℃。さらにファームウェア/BIOSも、デスクトップ向けのスループット重視ではなく、品質保証と決定性を重視した設定になっている。Linuxで7マイクロ秒未満の割り込みレイテンシを実現し、ハイパーバイザーを使えばハードリアルタイム運用も可能だ。SKUはX168(8コア+32CU)、X188(12コア+32CU)、X199(16コア+40CU)の3種類が予定されている。
AMDはまた、X100を搭載したKriaシステムオンモジュール(SOM)を発表した。既存のKria製品はXilinx Zynq UltraScale+を採用し、Arm Cortex-A53コアと16nmプロセスにとどまっていた。新Kria AI SOMはx86ベースへの大きな移行となり、性能が大幅に向上する。フォームファクタはPCMIG標準の120×120mm COM-HPCを採用し、NVIDIA Jetsonシリーズを直接ターゲットにする。RDNA 3.5にテンソルコアがないため、実際のAI計算性能ではNVIDIAが有利な可能性もあるが、AMDはサイズと消費電力の点で競争力があると主張する。
Kria AI SOM自体はAMDデザインだが、AMD自身が販売するわけではなく、認定を受けたパートナー企業がKriaブランドで販売する。また、非KriaブランドのX100搭載SOMを販売することも可能だ。
さらにAMDは、Kria AI Robotics Development Platformも提供する。これはX199を搭載したAMD製「ゴールデンリファレンス」SOMを、AMD製キャリアカードに載せたターンキー開発キットだ。ネットワークは複数の5GbEポートと10GbEのQSFPポートを備え、I/OとしてUSB-C(USB4×2、USB3.2×3)とUSB-A×2を搭載する。さらにSpartan UltraScale+ FPGAを搭載し、リアルタイムセンサーフュージョンなどを担当する。これにより開発者は、基板を組み立てることなくすぐに開発を始められる。
X100シリーズは10年間の長期供給プログラムに対応しており、Strix Haloシリコンの安定供給が保証される。AMDはハードウェア、ソフトウェア、エコシステムのすべてでフィジカルAI市場に本格参入し、NVIDIAや他のチップメーカーと競争する構えだ。