PwC報告:AIが世界の労働市場を二極化、人間のスキルに報いる
PwCの「2026年グローバルAI雇用バロメーター」によると、AIは労働市場を二つのトラックに分けている。専門職(AIが専門家を増強)は民主化職(AIが業務を容易化)よりも成長が速い。AIスキルを持つ職種の成長率は69%で全市場の約8倍、平均賃金プレミアムは62%に達する。AI活用が進んだ「スーパースター企業」の生産性は163%向上。エントリーレベルでもAIにさらされる職種ほど高度なスキルが求められている。
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)は2026年6月15日、『2026年グローバルAI雇用バロメーター』を発表しました。本レポートは、6大陸27カ国・地域における10億件以上の求人広告を分析し、AIが雇用、スキル、賃金、生産性に与える影響を包括的に調査しています。
報告書の主要な発見として、AIが「二層構造(two-track)」の労働市場を生み出していることが挙げられます。一方の「専門職化(professionalised)」された役割では、AIがルーティン業務を自動化し、人間の判断力や専門知識がより重視されます。例えば放射線科医や採用担当者などです。もう一方は「民主化(democratised)」された役割で、AIが業務そのものを非専門家でも遂行できるようにするものです。ITサービス管理者や医療秘書などが該当します。専門職化された役割は、民主化された役割に比べて求人数の伸びが2倍、賃金上昇率が42%も高くなっています。
生産性の面でも格差が広がっています。AIへの露出が最も高い企業グループ(トップ20%)は、2018年比で労働生産性が163%向上し、AI高露出企業全体の5倍近くの成長を達成しました。これらの「スーパースター企業」は、同時に従業員数も52%増加させており、AI低露出企業の36%を上回っています。
AIスキルへの需要は急激に拡大しています。特定のAIスキル(プロンプトエンジニアリングや機械学習など)を必要とする求人は前年比69%増加し、全求人市場の9%増の約8倍の伸びを示しました。AI求人の数は2024年のほぼ2倍です。また、AIスキルを持つ労働者に対する平均賃金プレミアムは62%に達し、前年の57%から上昇しました。業種別では消費財市場で118%と最も高く、政府・公共部門では16%と低くなっています。
エントリーレベルの職種も変化しています。米国の240万件のエントリーレベル求人を分析したところ、AIへの露出が高い職種では、伝統的に上級職に求められる「人間重視」スキル(リーダーシップ、創造性、対面コミュニケーションなど)が要求される確率が7倍高いことがわかりました。こうした「高度化(seniorised)」されたエントリーレベルの求人は2019年以降35%増加した一方、他のエントリーレベル求人は10%減少しました。
PwCは、企業は自動化だけでなく、AIを活用して人間の専門性を増幅し、新たな価値を創造する戦略を取るべきだと提言しています。従来の経験と専門知識の関係が変わる中で、組織は若手人材の育成方法を再考する必要があるとしています。